動物病院

動物病院M&Aの手数料相場と費用|手残りを最大化するプロの戦略

この記事では、動物病院のM&Aを検討されている院長先生に向けて、気になる「手数料」の仕組みと相場、そして手元に残るお金を最大化するための戦略を解説します。読了後には、自院の場合にかかる費用の概算と、より良い条件で承継するための具体的なアクションが理解できるようになります。

動物病院のM&Aにおける全体像をまずは知りたい方はこちら


経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。 プロの目利きで自院の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。

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動物病院M&Aの手数料相場とは? 損をしないための基礎知識

M&Aの手数料は、依頼する仲介会社やマッチングサイトによって体系が大きく異なります。「相談無料」という言葉に安心していたら、後から高額な費用が発生したというケースも少なくありません。まずは業界の標準的な費用構造を理解しましょう。

仲介手数料の仕組みと「レーマン方式」の算出法

M&A仲介会社に支払う手数料の計算で最も一般的なのが「レーマン方式」です。これは、移動する資産の額(譲渡価格)に応じて料率が変わる仕組みです。

一般的な料率の目安は以下の通りです。

   譲渡価格5億円以下部分: 5%

   譲渡価格5億円超〜10億円以下部分: 4%

   (以下、金額が上がるごとに料率は下がります)

例えば、譲渡価格が5,000万円で成立した場合、その5%にあたる250万円が手数料となります。しかし、ここで注意が必要なのが「最低報酬額」の設定です。多くの大手仲介会社では、「譲渡価格に関わらず、最低でも1,000万円〜2,000万円の手数料をいただきます」という規定を設けています。

小規模な動物病院で譲渡価格が数千万円の場合、レーマン方式で計算した額よりも最低報酬額の方が高くなり、手取りが大きく減ってしまう可能性があります。契約前に必ず確認しましょう。

レーマン方式とその他手数料について詳しく知りたい方はこちら

「着手金・月額報酬・中間金」の有無が総額を左右する

成功報酬(成約した時に払うお金)以外にかかる費用にも注意が必要です。

   着手金: 依頼した時点で発生する費用(数十万〜数百万)。成約しなくても返金されません。

   中間金: 基本合意契約を結んだ時点で発生する費用。

   月額報酬(リテイナーフィー): コンサルティング料として毎月発生する費用。

最近では、これらを無料にした「完全成功報酬型」の会社も増えています。特に譲渡までの期間が読めない場合は、固定費がかからない会社を選ぶのがリスクヘッジになります。
動物病院のM&A手数料

買い手と売り手、手数料は「誰が・いつ」払うのか?

手数料を「誰が」払うかは、M&Aの形式によって異なります。

   仲介形式: 売り手と買い手の双方が、仲介会社に手数料を支払います。

   FA(ファイナンシャル・アドバイザー)形式: 売り手または買い手の片方につく形式。依頼した側が支払います。

   直接買取形式: 買い手企業が直接売り手から買い取る場合、仲介が入らないため、売り手の手数料は無料になるケースが多いです。

売り手である院長先生のキャッシュフローとしては、譲渡代金が入金されたタイミングで成功報酬を支払うのが一般的ですが、着手金や中間金がある場合は先行出費となるため、資金繰りに注意が必要です。

評価額(売却価格)を左右する「現場のリアル」

「相場はいくらですか?」とよく聞かれますが、動物病院の価値は売上や利益などの数字だけでは決まりません。現場を知るコンサルタントとして断言しますが、買い手が本当に見ているのは「持続可能性」です。

売上よりも重要?「院長以外の常勤獣医師」がいるかの価値

これは非常に重要なポイントですが、院長先生以外に常勤の獣医師がいるかどうかで、評価額は天と地ほど変わります。

仮に売上が高くても、院長一人で回している病院の場合、院長が引退(退職)した瞬間に病院機能が停止してしまいます。買い手にとって、これは最大のリスクです。逆に、院長がいなくなっても診療を継続できる勤務医が定着している病院は、それだけで極めて高い価値がつきます。

「技術」の承継が難しい診療科目(外科・整形外科・矯正歯科など)などとは異なり、動物病院は「チーム」としての機能が資産価値に直結するのです。動物病院のスタッフ

立地と近隣グループ病院とのシナジーが価格を跳ね上げる

買い手がグループ病院を展開している場合、彼らは「ドミナント戦略(特定地域への集中出店)」を意識しています。

もし先生の病院が、買い手の既存病院から車で15分圏内にあれば、スタッフの融通や、一次診療と二次診療の連携といったシナジー(相乗効果)が期待できます。この場合、単体の収益性以上に高い評価額が提示されることがあります。「近隣に競合グループがあるから売れない」ではなく、むしろ「近隣だからこそ高く売れる」可能性があるのです。

スタッフの「残留意思」がM&A成立の生命線

買い手企業がデューデリジェンス(買収監査)の段階で最も気に掛けるのは、カルテの枚数でも医療機器のスペックでもなく、「M&A後もスタッフが残ってくれるか」です。

環境の変化を嫌って、看護師やトリマーが一斉退職してしまうと、病院運営は立ち行かなくなります。実際、条件面では合意していても、スタッフ面談の感触が悪くて破談になるケースは多々あります。

スタッフとの信頼関係を築き、「院長が変わってもここで働きたい」と思える環境を作っておくことが、実は最強のM&A対策なのです。

手数料を抑え、手取り額を増やすための実践的テクニック

手数料を安く抑えることと、手元に残るお金を増やすことは必ずしもイコールではありません。賢い戦略が必要です。

「手数料無料」の直買取モデル vs 仲介モデルの選び方

最近、大手動物病院グループによる「仲介手数料無料」での直接買取が増えています。これは売り手にとって数百万円〜数千万円のコストカットになる大きなメリットです。

一方で、仲介会社を入れるメリットは「複数の買い手候補から、一番高い値をつけた相手を選べる(オークション効果)」点にあります。

   とにかく早く、手数料をかけずに売りたい → 直接買取モデル

   時間はかかっても、多くの候補から最高値を目指したい → 仲介モデル

自院の優先順位に合わせて使い分けるのが正解です。

動物病院特有の「前受金(負債扱い)」リスクとその対策

意外な落とし穴が「前受金」です。例えば、フィラリア予防薬のまとめ売りや、会員制の年会費などを先に受け取っている場合、会計上はこれらは「将来サービスを提供する義務=負債」と見なされます。

M&Aの譲渡価格決定時に、この前受金分(例えば3,000万円あればその額)を企業価値からマイナスされる可能性があります。買い手側から「返金リスクがある」と指摘されるためです。この点を事前に整理し、交渉で不利にならないよう準備しておく必要があります。

譲渡益にかかる税金を把握し、最終的な「手残り」を計算する

手数料を引いた後の金額がそのまま手に入るわけではありません。税金です。

   株式譲渡(法人ごとの売却): 売却益に対して約20%の分離課税。

   事業譲渡(個人事業などの場合): 売却益は法人税(または所得税)の対象となり、実効税率で約30〜55%近く取られることもあります。

一般的に、手取りを最大化するには「株式譲渡」の方が税制面で有利です。個人事業主の先生の場合、M&Aを見据えて「医療法人化」してから売却するというスキームも検討に値します。

M&Aにおける税金の詳細と節税方法について詳しく知りたい方はこちら

手数料のシミュレーションや、自院の適正な評価額を知りたい方は、まずは動物病院専門のM&A資料をダウンロードするか、当社の無料出口戦略診断をご利用ください。

動物病院M&Aで失敗しないための「専門家選び」と「地雷回避」

最後に、交渉を台無しにしないためのリスク管理についてお伝えします。

 契約前に確認すべき「未払い残業代」と労務リスク

買い手側の監査で必ずチェックされるのが「労務」です。特に、みなし残業の運用が曖昧だったり、未払い残業代が存在したりすると、その潜在債務分(過去に遡って数百万〜数千万)を譲渡価格から減額される、あるいはM&A自体が破談になることがあります。

「うちはアットホームだから大丈夫」は通用しません。売却活動を始める前に、一度労務のプロにチェックしてもらい、クリーンな状態にしておくことが、高値売却の必須条件です。

提示された評価額と希望額にギャップがある時の対処法

もし提示額が希望より低かった場合、感情的にならずに理由を確認しましょう。「設備が古いから」なら仕方ありませんが、「将来の収益性が不透明」という理由なら、反論の余地があります。

例えば、カルテの稼働率や、若手獣医師の成長曲線をデータで示し、「今は投資段階だが、将来的にはこれだけ伸びる」という根拠を提示することで、評価が見直されるケースもあります。

弁護士・税理士・仲介会社…どの専門家を味方につけるべきか?

M&Aは総合格闘技です。契約書のリスクチェックは弁護士、税金計算は税理士、相手探しと条件交渉は仲介会社と、それぞれのプロを使い分ける必要があります。

特に重要なのは、「動物病院業界の慣習を知っている専門家か」という点です。一般的な企業のM&Aしか知らない専門家だと、医療機器のリース契約や、獣医師特有の雇用慣行を見落とす恐れがあります。

 【まとめ】手数料の多寡より「誰に継ぐか」が病院の未来を決める

動物病院のM&Aにおいて、手数料や手取り額は確かに重要です。しかし、最も大切なのは「先生が大切に育ててきた病院と、スタッフ、そして患者様を、誰に託すか」という点です。

目先の手数料の安さだけで買い手を選んでしまい、M&A後にスタッフが離散し、病院の評判が落ちてしまっては、元も子もありません。

条件面だけでなく、理念やビジョンを共有できる「最良のパートナー」を見つけることこそが、真のハッピーリタイアへの道です。

専門家への相談を検討される際は、動物病院業界の知見が豊富な船井総研あがたFASへご相談いただくか、まずは各業界に特化したM&A、事業承継に関する資料をダウンロードして、情報収集から始めてみてください。

知識を得るだけでは、未来は変わりません。 激変する環境下で、貴社の選択肢が狭まってしまう前に『攻めの出口戦略』を。

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経営者としての集大成を、最も価値ある形で次へ繋ぐ準備は、今、ここから始まります。

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動物病院のM&Aにおける手数料についてよくあるご質問

Q. 動物病院のM&A手数料は誰が払いますか?

A. 仲介形式なら「売り手と買い手双方」が払いますが、最近は買い手企業が全額負担する「直接買取形式」も増えており、売り手負担ゼロのケースもあります。

Q. 赤字の動物病院でも売却できますか?

A. 可能です。赤字でも「立地が良い」「獣医師・スタッフが定着している」「カルテ枚数が多い」等の資産があれば、大手グループが買収するケースは多々あります。

Q. 院長一人だけの病院でも売れますか?

A. 売却可能ですが、評価額は低くなる傾向があります。院長引退後の診療継続が課題となるため、一定期間の顧問契約(引継ぎ勤務)が条件になることが多いです。

Q. 相談したらすぐに売りに出さないといけませんか?

A. いいえ。まずは「自院の価値(株価)」を知るための無料査定だけでも可能です。実際に売却を決断するまで数年かける先生も多くいらっしゃいます。

Q. スタッフに知られずにM&Aを進められますか?

A. 可能です。最終契約の直前までスタッフには伏せて進めるのが一般的です。情報漏洩を防ぐため、秘密保持契約(NDA)を締結して進めます。


長谷川光太郎

(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント

国内大手メーカー勤務を経て、2018年に船井総研に入社。歯科医院の経営コンサルティングに従事し、現在は歯科医院・医療法人の事業承継全般の支援を行っている。医療法人特有の事業承継に関わる知見を有し、譲渡側・譲受側双方からの信頼が厚い。

長谷川光太郎

(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント

国内大手メーカー勤務を経て、2018年に船井総研に入社。歯科医院の経営コンサルティングに従事し、現在は歯科医院・医療法人の事業承継全般の支援を行っている。医療法人特有の事業承継に関わる知見を有し、譲渡側・譲受側双方からの信頼が厚い。