解体業の2024年M&Aの振り返りをさせていただきます。
解体工事業の市場動向
はつり・解体工事業の完成工事高は、長期的な増加傾向にあり、2022年では過去最高の約1.15兆円となっています。2020年以降の完成工事高増加は、建築業法等の改正もあり、2019年から2020年にかけて増加しています。また2021年からの「アスベスト調査の義務化」による駆け込み需要が2020年に集中したことも、市場規模の増大に影響したと考えられます。
解体工事業界では政策や規制により成長要因やリスクが変化するため、それらを適切に掴み適応していくことが重要となります。以下に代表的なものをいくつか紹介します。
解体関連法の変化
2016年、建設業法の改正が行われました。これにより独立した登録制度に変わり、2016年以降で「解体工事業」の業者数は増加傾向で、2023年にも増加しています。今後も市場規模の拡大は進んでいくことが予想されます。
また、2023年にはアスベストの事前調査が義務化されました。これに伴い、アスベストの安全な取り扱いや除去に特化したサービスへの需要が高まっており、事業機会の拡大が期待できます。一方、調査期間において一般的に数週間は要するとされ、義務化前と比べてプロジェクト全体のスケジュールに影響を与えることが懸念されます。
2024年には相続登記義務化法が施行されました。それにより今後は建物の所有者が明確になるため解体工事を行う際の契約や許可取得がスムーズになり、解体工事への依頼速度は迅速化していくでしょう。
さらに空き家税(非居住住宅利活用促進税)が2026年以降に導入予定です。現状では京都市にのみ導入されるが、全国的に導入された場合、空き家解体の需要が増加し、解体工事業の需要が増加する見込みです。
このように、これらの政策や規制の動向を踏まえると解体工事業は技術的な専門性と安全基準の向上を背景に市場が成長することが期待できます。また、「建設業法」の改正・「相続登記義務化法」・「空き家税」の導入は、解体工事業の促進に大きく影響を与えると予測しています。
大手企業による戦略的買収の加速
前述の市場動向や政策の背景を踏まえ、大手企業は事業領域の拡大、特に環境技術やリサイクル事業の強化を目的としたM&Aを積極的に推進しています。また、IT技術を活用した業務効率化やデータ管理能力の強化を目指し、関連技術を持つ企業への関心も高まっています。
中小企業の事業承継ニーズの増加
後継者不足に悩む中小企業にとって、M&Aは事業承継の重要な手段となっており、それは解体工事業も変わりません。地域に根ざした中小企業が、大手企業の傘下に入ることで、技術やノウハウ、雇用を維持し、事業の継続を図る事例が増加しています。
とくに解体業は地域性が強い為、その地域のネットワークや人材を確保することは、大手企業にとって大きなメリットとなります。
異業種からの参入
2024年に限らず、ここ数年では建設業や不動産業など、関連業界からの新規参入も目立っています。これにより、解体から廃棄物処理、リサイクルまでの一貫したサービス提供体制を構築し、シナジー効果を追求する動きが活発化しています。解体業は建設業との結びつきが強く、異業種からの参入は今後も増加することが予想されます。
M&Aにおける注意点
解体業は、許認可事業であり、M&Aにおいては許認可の移転や更新が重要な要素となります。また、地域に根差した事業であるため、M&A後も地域社会との良好な関係を維持することが重要です。2024年の解体工事業界のM&A動向は、業界の構造変化と将来への戦略的な動きを反映しており、環境規制の強化や技術革新の進展、そして事業承継の課題が、M&A市場を活性化させる要因となっています。
この流れに乗りM&Aを検討していくことで更なる企業成長の機会を創出することが期待できますが、地域性の理解や政策に対応していく力が必要となります。
今後の動向も踏まえ、解体業でのコンサルティングを長年行ってきた船井総研グループにまずはご相談いただけますと幸甚です。

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