介護

介護業界のM&A事例

ご承知のように、介護事業は再編期にあり、M&Aの件数は年々増えています。また、介護事業者が介護事業者をM&Aするケースだけでなく、関連する保険会社やメディア企業が介護事業をM&Aするケース、また、介護業界と障がい福祉業界にまたがるM&Aも増加しています。下記では、最近のM&Aの事例を紹介します。

介護業界M&A①:株式会社鎌倉新書による株式会社エイジプラスの事業取得

仏壇仏具業界向け書籍の出版社として創業された株式会社鎌倉新書が、株式会社エイジプラスから介護施設(有料老人ホーム、高齢者住宅など)紹介事業と見守りサービス事業を譲り受けた事例になります。株式会社鎌倉新書は葬祭事業、お墓事業、仏壇事業、相続事業などの「終活」をテーマに事業を展開しており、新たに介護事業へ参入することで、サービスの一貫性をより強固なものにしています。

また株式会社鎌倉新書はHPにて、今後の展開として「既存事業を継続的に拡大させることに加え『生前領域への新規事業』創出で成⻑を加速していきます。」と述べており、「終活ワンストップサービス」として、葬儀やお墓、仏壇などの供養事業だけでなく、終活に関わる様々なニーズや課題を一貫して応えるための計画を立てています。

介護業界M&A②:揚工舎グループによる株式会社ケア・フレンドの子会社化

東証TOKYO PRO Market上場企業のうち唯一の介護事業者であり、2003年創立後2010年よりM&A件数を積み重ねている揚工舎グループが、介護事業や福祉用具レンタル・販売事業を展開している株式会社ケア・フレンドを子会社化した事例です。揚工舎グループは「感動空間」の創造をテーマとして掲げ、代表が「理学療法士として培った知識・経験を具体的な形として世に示してみたい」との想いから設立された会社です。

そのため、理学療法士の知識・経験を取り入れたサービスの提供を強みとしており、リハビリ体操、ヨガ等のメニューに加え、訓練用具や福祉用具を使ったサービスを提供しています。本件により揚工舎グループは、営業拠点の拡大に留まらず、株式会社ケア・フレンドの福祉用具のレンタル・販売事業を自社内に取り入れることで、販路拡大や規模拡大によるシナジー効果を生み出すことができるようになったのではないでしょうか。

介護業界M&A③:株式会社ケア21によるひまわり医療介護サービス株式会社の事業取得

1997年より関西エリアにて介護事業(訪問介護ステーション拠点運営、介護相続業務等)を行ってきた株式会社ケア21が、関東エリアにて介護事業(訪問介護事業、居宅介護支援事業、グループホーム運営、予防訪問介護事業等)を行う医療介護サービス株式会社から訪問介護・居宅介護支援事業を譲り受けた事例になります。株式会社ケア21はこれまでにも、福岡市内を対象とした介護保険事業及び介護保険外の介護サービス事業の運営を譲り受けたり、京都市山科区において通所介護事業の運営を譲り受けたり、有限会社パートナーズ(株式会社ケア21名古屋)の株主を完全取得したりするなど、全国に営業拠点を展開していました。

本件においても、同様に営業エリアの拡大のためのものと考えられます。また株式会社ケア21のM&Aの特徴として、営業所単位で運営権を譲り受けている点が挙げられます。本件が該当するかは定かではありませんが、仮に現運営会社が苦戦している営業拠点であっても、譲り受け側の運営ノウハウによって立て直しが可能となるケースもあり得ます。

多様化する介護福祉業界のM&Aと中堅中小法人

先述した3つの事例からも、介護業界において、様々なパターンでM&Aが行われていることが分かるかと思います。
また、メディアでは大手企業のM&Aが取り上げられることが多いですが、一方で例えば売上が数億円~数10億円規模の中堅・中小規模の企業、法人のM&Aも多く行われています。自社は小規模だからM&Aは関係がない、ということは決してございません。


その他、介護業界・福祉業界のM&Aについてはこちらからご確認ください。

1.介護M&AのTOP
2.介護業界の動向とM&A
3.介護業界M&Aのメリット・デメリット
4.介護業界のM&A事例

最後に、船井総研グループでは介護業界向けのM&Aレポートを無料で配布しております。この機会にぜひダウンロードの上、ご覧くださいませ。


田畑 伸朗

(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント

大手地方銀行にて、中小企業コンサルティング業務に従事。本部にて審査部審査役を長らく務め、中小企業の資金調達や財務管理のみならず、金融機関側の与信判断にも知見を有する。2009年から4年間、銀行の医療福祉支援チームに属し、関西エリアのクリニック開業支援や介護福祉施設の設備投資案件等に数多く関わる。それら経験を活かし、現在は医療福祉業界を中心にM&A仲介業務に従事している。

田畑 伸朗

(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント

大手地方銀行にて、中小企業コンサルティング業務に従事。本部にて審査部審査役を長らく務め、中小企業の資金調達や財務管理のみならず、金融機関側の与信判断にも知見を有する。2009年から4年間、銀行の医療福祉支援チームに属し、関西エリアのクリニック開業支援や介護福祉施設の設備投資案件等に数多く関わる。それら経験を活かし、現在は医療福祉業界を中心にM&A仲介業務に従事している。