葬祭業のM&Aにかかる重要な5つのポイント~葬祭業M&A事例紹介(2)~
- 葬祭業 M&Aレポート
今回は前回に引き続き弊社で担当させていただいた葬儀社のM&A事例について触れていきます。
ある葬儀社を運営している会社のオーナー様が会社の株式の売却を決意し、実際に買い手候補がつき、交渉が始まりました。
M&Aにおいて、交渉が進むとデューデリジェンス(買収前調査)を行います。
このステップになると会社の財務・会計・労務・法務・ビジネスモデル・知的資産等の非常に細かい調査が行われます。(経営者様にとっては約2か月にも及ぶこの調査が非常に”しんどい”ため、我々も全力でサポートさせていただいております)
デューデリジェンスでは、実際に買い手と売り手オーナー様との間で確認事項が飛び交いましたが、その中で重要な5つのポイントがありました。
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1.会員制度
事業系葬儀社であっても、互助会系葬儀社であっても、基本的には会員制度を採用しているかと思います。これが年間の売上高にどれだけ貢献しているのか。会員増加に向けた営業活動にコンプライアンス違反はないかなど、M&A後に買い手がこの知的資産をどれだけ活かせるのかは、譲渡対価を確定させる際に非常に重要なポイントになります。
2.斎場建物の安全性
自社所有の斎場があった場合、これが法的に使用しても安全かどうか必ず証明が必要となります。
古い建物だと建築時に行政の検査を受けず「検査済証」が発行されていないケースや建材にアスベストを使用している可能性があり、安全性が証明できない場合、M&Aができない事態となる可能性や、アスベストの囲い込み工事により譲渡対価が減額となる可能性があります。時間があれば対処法はございますので事前の確認をしておきましょう。
3.従業員の未払残業代
葬儀社の場合、多くが会社のスタッフが一晩中スタンバイし、ご遺族や病院から遺体の搬送の依頼を受けていると思います。この論点としては、「待機しているスタッフの賃金が確実に支払われているか」です。深夜割増や休日出勤をタイムカードなどでしっかり時間管理し、その分を賃金として支払っていればいいですが、これをしっかりやっているかどうかで、M&Aの条件も大きく変わります。対策は早い段階で社会保険労務士の先生を交えて、労働環境を改善していく必要があります。
少なくとも自社が本当に大丈夫なのかは確認しておいた方がいいと考えられます。
4.財務・会計の処理方法
過去に資産に計上しているものが、現在は全く価値のないものになっていることや、簿外の負債が経営者の気づかない範疇で発生していることが多く見受けられます。こちらは税理士の先生を交えて、発生の経緯や改善案を検討する必要があります。
5.拠点別の予実管理と経営成績管理
会社の経営計画を作成していないという企業も多くあるかと思います。
しかしながら買い手の視点から見て計画を立て、スタッフに周知させ、その結果達成が出来ているのかの検証が行われているかは非常に重要です。このPDCAの動き方をスタッフが習得しているとM&A後にスムーズに会社が成長しやすいといえます。
また経営成績を拠点別に毎月管理できているかで、買い手としては、どの拠点にどういった対応が必要なのか、M&A後のやるべき戦略を立てることができます。
いかがでしたでしょうか。デューデリジェンスはM&Aでは必須のため、我々も事前準備からしっかりサポートさせていただいております。是非ご参考になさってください。
船井総研入社後は専門サービス業の経営コンサルティング部門の統括責任者として多数のM&Aを経験。現在は、M&A部門の統括責任者をつとめる。買って終わり、売って終わりではなく、M&A後の企業成長を実現するマッチングに定評がある。過去経営支援を行ってきた企業は200を超える。
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