10年以内に3分の2の中小企業が事業承継しなければならない日本
日本の中小企業数360万社中、60歳を越える経営者の中小企業数は概ね245万社といわれています。つまり5~10年以内には日本の中小企業の概ね3分の2が次世代への「事業承継」をしなければならないということで、一見すると「事業承継をすること」が近々の課題とされています。
しかしながら一番大事なポイントは「事業承継後」、つまり「事業承継が成功したかどうか」という点にあります。今はあまり注目されていないだけですが、実のところ事業承継とは、ヒト・モノ・カネにおいて細かく最適な対応が求められ、それぞれ順序とコツがございます。
事業承継を成功させるコツと順序
具体的には次の項目を①~⑦の順に事業承継を進めていく必要があります。
①借入金の状況把握と対策
②役員退職金の調達適正額の把握
③後継者の確定
④自社独自の事業承継スキームの構築
⑤事業承継計画の策定
⑥アクションプランの実行と検証
⑦承継者と後継者双方の合意
成長企業こそ、後継者にバトンタッチができない
中小企業の事業承継が円滑に進まない主たる要因として、「お金の課題」があげられます。
よくご相談いただくのは、
「自社の借入金が重すぎて、今後の返済ができるか不安」
という点です。
この課題は、何も経営状況が悪化している企業だけではなく、成長している企業ほど、新規事業投資や設備投資のための資金調達を頻繁に行い、売上を飛躍的に成長させ、そこで得た資金と追加調達でさらに投資をしており、返済の可否が隣り合わせである傾向が強くみられます。
常に成長が求められる状況にあることから、後継者にいきなりバトンタッチというわけにはいかないようです。
オーナー個人の貸付金がボトルネックになるケースも
さらには、オーナー個人が会社に貸付金として資金を入れているケースも散見されます。
経営者の皆様は、この借入金とオーナー貸付金の返済ができるのか、案外漠然と捉えられていませんでしょうか。具体的には、自社の資金繰り予定表を作成して、どれだけ毎月キャッシュが生めるのか、そのうち、短期・長期借入金の返済がいついくら発生して、毎月生まれるキャッシュの中から返済可能なのか、残った資金は次の事業投資として予定通り留保できていく予定なのか、これらをまずは把握する必要があります。
自社にとっての「最適なお金の借り方」とは?
次に、自社にとって「最適なお金の借り方」を検討する必要があります。
借入金には、個人保証、担保、金利、保証協会、返済パターンがそれぞれ存在し、会社の新規事業投資とお金の借り方がマッチしていなかったり、返済の仕方がマッチしていないことから、余分に借り入れを行っていたり、実は条件が改善できる可能性があります。
ここを行う事で、次世代に引き継ぎやすい最適な借入金の形にしていく必要があることと、さらにはご自身が会社に入れた貸付金もしっかり返済する計画を作っておく必要があります。
安心して次世代に引き継ぐには、いま皆様の代で、この財務ノウハウをしっかり構築しておく必要があるのです。
まずは借入金の解決が、心理的にも次のステップに進めやすい結果を生みます。
次回は役員の退職金に関わる課題について触れていきます。