建設業における事業譲渡は、単なる資産の売買ではありません。
許可の継続と人材のバトンタッチをいかに完璧に行うかが、事業の未来を左右します。本稿では、許可を失わず、かつ「譲渡価額」を最大化するための実務を解説します。
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建設業における事業譲渡とは?会社分割や株式譲渡との決定的な違い
建設業の事業譲渡は、会社が営む建設部門を切り出し、譲受企業へ引き継ぐ手法です。
法人格を維持したまま、特定の負債を切り離せる柔軟性が特徴ですが、許認可の扱いや「個別承継」という会社法上の手続きに特有の注意点があります。
2020年改正建設業法で誕生した「事前認可制度」の正体
かつて建設業の事業譲渡では、許可を一度「廃業」し、譲受側が「新規取得」しなければなりませんでした。
この過程で生じる数ヶ月の空白期間が営業上の大きな足枷となっていました。
しかし、2020年10月の法改正により、事前に行政庁の認可を受けることで、許可番号をそのまま「引き継ぐ」ことが可能となりました。
これにより、元請からの信頼や過去の実績を途切れさせることなく、戦略的譲渡が実現できます。
会社を丸ごと譲渡する株式譲渡と事業の一部を譲る事業譲渡の使い分け
株式譲渡は経営権そのものを移転させる手法であり、手続きは簡便です。
一方、事業譲渡は「空調部門のみを譲渡し、土木部門は残す」といった選択が可能です。
建設業界では、資材高騰や賃金上昇により不採算となった部門のみを切り離し、得意分野に経営資源を集中させるために事業譲渡が選ばれるケースが急増しています。
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建設業の事業譲渡を成功させる実務フロー:事前相談から認可までの7ステップ
事業譲渡を成功させるには、行政窓口との綿密な連携が不可欠です。
認可が下りなければ、譲渡日に「無許可業者」となり、500万円以上の工事を一切受注できなくなるリスクがあります。
譲渡予定日の4ヶ月前から着手すべき理由と自治体窓口への事前相談
認可申請の受理から審査完了までには、自治体ごとに一定の審査期間を要します。
例えば東京都では、譲渡予定日の4ヶ月前から相談を開始するのが鉄則です。
この事前相談を怠れば、書類不備による認可遅延が発生し、譲渡契約そのものが白紙に戻る「ブレイク」を招くリスクが生じます。
建設業の事業承継を確実にする譲渡契約書の必須条項
譲渡契約書は、単なる対価の合意書ではありません。
譲渡対象となる財産目録、負債の所在、そして認可が下りなかった際の解除条件などを精緻に規定する必要があります。
資産や金融債務に留まらない、従業員の雇用継続を明記する重要性
建設業の価値の本質は、重機や車両ではなく「人」にあります。
譲渡契約において従業員の待遇や勤続年数の通算を明記することは、人材の離職を防ぐための絶対条件といえます。
譲受側との協議では、帳簿上の数字のみならず、現場を支える職人たちの未来をいかに守るかを交渉のテーブルに乗せるべきです。
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会社法が定める手続き:競業避止義務と公告の注意点
会社法の手続きを軽視すれば、将来的に法的な紛争に巻き込まれる恐れがあります。
特に譲渡側の経営者が「また別の場所で建設業を再開したい」と考えている場合は、細心の注意が必要です。
会社法に基づく20年間の営業禁止リスクを回避する実務
会社法第21条では、特約を設けない限り、譲渡人は同一または隣接する市区町村において「20年間」同一事業を行うことが禁止されています。
これが「競業避止義務」です。将来的に別の地域や業種での再出発を検討している場合、契約書においてこの義務を「免除」あるいは「短縮」する旨を明記しておくのが実務上の鉄則です。
株主総会の特別決議と反対株主への買取請求権対応
事業の全部を譲渡する際、株主総会で議決権の3分の2以上の賛成を得る「特別決議」が不可欠です。
一部の株主が反対し、株式買取請求権を行使する場合の資金手当てや実務フローについては、事前に税理士等と協議しておくことが円滑なバトンタッチに繋がります。

【実務公開】建設業の譲渡査定を左右する「有資格者の数」と「のれん
財務諸表の純資産以上に高い評価、いわゆる「のれん」がつく会社には共通のルールがあります。
買い手企業が最も注視するのは「有資格者の数」です。
1級施工管理技士の在籍数が譲渡価格の「レバレッジ」になる理由
一級施工管理技士の数は、譲受企業にとって「即戦力の獲得」であり、かつ「公共工事の格付けランクアップ」を意味します。
複数の一級保持者が在籍し、かつ若手への資格取得支援体制が整っている会社は、純資産に数年分の利益を上乗せした高額査定がつきやすいといえます。
簿外債務に要注意!売掛金の回収不能がDDでブレイクを招く恐怖
実務の現場で最も恐ろしいのは、デューデリジェンス(調査)段階での「売掛金の回収不能」の発覚です。
社長も把握していなかった「その他」項目の滞留債権が露呈し、それを資産から差し引くと実質的な金融債務超過に転落するケースがあります。
譲渡を検討する1~2年前から、税理士と共に財務諸表をクリーンに整えておくことが、成約への最短距離です。
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キーマン離職を防ぐ!意向表明段階で伝えるべき「人心掌握」のタイミング
建設業界では「社長の決めたことならついていく」という義理人情が厚い一方、不透明な譲渡には強い反発が起きます。
アドバイザリー契約時ではなく「相手の顔」が見えてから話す鉄則
検討段階で安易に情報を漏らすと、キーマンの不安を煽り、離職を招きます。
情報を開示するベストなタイミングは、意向表明(ラブレター)が届き、相手企業の具体的な条件や顔ぶれが見えてきた段階です。
「この会社と組めば、今より安定した環境で働ける」という具体的なメリットと共に伝えることで、反発は期待へと変わります。
1人親方や外注先への挨拶回りで「現場の品質」を維持する伝え方
外注先の一人親方などに対しても、過度な不安を与える必要はありません。
「運営体制は変わるが、現場のやり方や品質は当面維持される」ことを誠実に伝えてください。
やるべき工事の内容が変わらないのであれば、彼らが離れていくリスクは低いです。
【まとめ】建設業の事業譲渡は「許可の維持」と「人材の価値」が成功の鍵
建設業の事業譲渡を成功させるには、事前認可制度による「許可の維持」と、有資格者を核とした「人材の価値」を正しく評価させることが不可欠です。
売掛金の精査やキーマンへの告知タイミングなど、実務上の落とし穴は多岐にわたります。
これら専門的な判断を誤ると、長年築き上げた事業が瓦解するリスクがあります。
建設業界に精通したアドバイザーを交え、遅くとも譲渡希望時期の半年〜1年前には準備を開始してください。
本テーマについて、より詳細な法務・税務の相談や実務対応が必要な場合は、建設業の特性を熟知した専門家への相談を推奨します。
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建設業における事業譲渡でよくあるご質問
Q: 建設業許可は事業譲渡でそのまま引き継げますか?
A: 原則として自動承継はできませんが、2020年改正による「事前認可制度」を利用すれば、許可番号や実績を維持したまま承継可能です。
Q: 事業譲渡と株式譲渡、建設業ではどちらが良いですか?
A: 会社全体を譲るなら株式譲渡、特定部門のみなら事業譲渡が適します。許可の継続性は事前認可があればどちらも確保できます。
Q: 譲渡後、前の地域で再び建設業を営めますか?
A: 会社法上の競業避止義務により、原則20年間は禁止されます。再開予定がある場合は、契約書でこの義務を免除する特約が必要です。
Q: 従業員にはいつ譲渡の話をすべきですか?
A: 検討初期は伏せ、譲受企業の顔ぶれと具体的条件が固まった「意向表明」の段階で伝えるのが、離職を防ぐ鉄則です。
Q: 債務超過の建設会社でも事業譲渡は可能ですか?
A: 可能です。有資格者が多く、技術力や顧客基盤がある場合、将来の収益性を評価して買い手が見つかるケースは多々あります。