建設工事業

建設業の事業承継ガイド|M&Aで許可を繋ぎ企業価値を最大化する

建設業界の経営者が直面する後継者問題に対し、最新の承継制度を活用して許可番号や技術を次世代に繋ぐ方法を解説します。

読了後には、自社の「本当の価値」を高めて第三者に「譲渡」するための具体的なステップが明確になります。

経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。 プロの目利きで自社の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。

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建設業における事業承継とは? 許可や実績を途切れさせず次世代へ繋ぐ経営戦略

建設業界における事業承継は、単なる「代表者の交代」ではありません。

長年培った建設業許可、経営事項審査の評点、そして現場の職人や協力会社との信頼関係を一括で引き継ぐ「高度な経営判断」です。

建設業における承継方法の選択肢と令和2年法改正による事前認可制度の活用

かつての制度では、事業譲渡や合併の際、建設業許可を一度廃業して取り直す必要がありました。

この「空白期間」が最大の障壁でしたが、令和2年の改正で、事前の認可を受ければ許可番号をそのまま維持できるようになりました。

法人成り・「戦略的譲渡」・合併・分割・相続の5パターンと手続の急所

承継には大きく5つの形式がありますが、共通して重要なのは「業種単位の切り出しは原則不可」という点です。

保有する許可業種をすべて引き継ぐのが鉄則であり、不要な業種がある場合は事前に廃業しておくなどの「下準備」が成約の鍵を握ります。

【1. 法人成り】個人事業から会社組織への円滑な許可の移行

個人事業主が会社を設立し、組織として事業を継続する形です。かつては個人での許可を一度廃業し、法人で新規取得し直す必要がありましたが、現在は事前認可により「許可番号」と「経審の実績」をそのまま法人へ持ち込めます。

手続の急所:個人事業主時代の資産・負債だけでなく、建設業に従事する従業員や機材も一体となって法人へ移ることが条件です。また、

設立する法人の役員に、個人事業主本人が就任している必要があります。

【2. 事業譲渡(戦略的譲渡)】M&Aで最も活用される「バトンタッチ」の形

特定の会社に建設業の事業を「譲渡」する、M&Aで最も一般的な手法です。経営権の「バトンタッチ」により、譲渡側は創業者利益を得てリタイアし、譲受側は即戦力の技術者と許可を一度に引き継げます。

手続の急所:譲渡契約の効力発生「前」に認可を受ける必要があります。万が一、認可が下りる前に事業を譲渡してしまうと、無許可営業期間が生じ、許可番号も失効するという致命的なリスクがあります。

【3. 合併】企業の力を統合し、許可と実績を一つの組織に集約

複数の会社を一つに統合する手法です。吸収合併の場合、消滅する会社が持っていた許可や公共工事の入札実績を、存続する会社が統合して引き継ぐことができます。

手続の急所:合併比率や債権者保護の手続きなど、会社法上のプロセスと並行して建設業法の認可を進める必要があります。存続会社が持っていない業種を消滅会社が持っている場合、その「業種追加」も同時に成立させるための緻密なスケジュール管理が求められます。

【4. 会社分割】建設部門を切り出し、新たな経営主体へ引き継ぐ

自社の一部門(建設部門)を切り離し、他の会社に承継させる、あるいは新会社として独立させる手法です。多角経営を行っている企業が、建設業のみを特定の「譲受」先へ引き継ぎたい場合に有効です

手続の急所:分割する部門に紐付く「専任技術者」や「経営業務の管理責任者」となるべき人材が、そのまま分割先の会社に移籍しなければなりません。人座が欠けると許可の要件を満たせなくなるため、キーマンの同意確保が絶対条件です。

【5. 相続】予期せぬ事態でも技術と許可を次世代へ守り抜く

個人事業主が死亡した場合に、その配偶者や子が事業と許可を引き継ぐ形です。以前は死亡後、許可は即座に失効していましたが、現在は「死亡後30日以内」に申請し、認可を受けることで許可を継続できます。

手続の急所:生前からの準備が理想ですが、急な事態でも「30日」という極めて短い期限内に動く必要があります。後継者が専任技術者の要件(実務経験や資格)をあらかじめ満たしているかどうかが、許可を守り抜けるかの分かれ道となります。

建設業の第三者承継が廃業より優先される実務上の根拠

戦略的譲渡に対する「身売りのようで恥ずかしい」という旧来の認識は、即刻払拭すべきです。

現代の経営者は、従業員の雇用維持を最優先し、自らも相応の対価を確保した上で、最大の重荷である金融債務の個人保証から解放される手段としてM&Aを賢明に選択しています。

自社に最適な引き継ぎ先が存在するのか懸念がある場合は、まず業界に特化した専門家へ相談し、自社の「のれん」が有する真の価値を把握することから開始してください。

有資格者数と技術力が譲渡価格を決定する。1級施工管理技士による評価の極大化

建設会社の譲渡において、最も強力な評価項目は有資格者の在籍数です

。特に1級施工管理技士が複数名在籍する企業は、譲受側にとって極めて希少価値の高い資産といえます。

実務上、1級土木や建築の資格者が1名増員されるだけで、評価額が数千万円単位で変動する事実は珍しくありません。

設備工事業(空調・給排水)への需要拡大。譲受側が求める優良企業の要件

現在、M&A市場で圧倒的な需要を誇るのが設備工事業(空調・給排水)です。

新築需要に依存せず、メンテナンスによる安定的な収益基盤を有するため、譲受企業は投資リスクが低いと判断します。

事務員にまで2級資格を取得させるような人材育成の仕組みが構築されている組織は、評価が格段に高まります。

建設業の事業承継を成功させる事前準備。精査で破談させないための要諦

成約直前で譲受側が辞退する事態。その要因の多くは、事前準備の不備にあります。

譲渡価格に直結する売掛金の回収状況。財務諸表を適正化する2年前からの経営改善

譲受側はデューデリジェンス(資産査定)を執行します。

ここで最も厳格に精査される項目が売掛金です。

その他の科目に紛れた滞留債権や、経営者自身が失念している未回収金が発覚した場合、実質的な金融債務超過と判定され、破談に直結します。

譲渡の2年前から税理士と共に財務諸表を適正化することが鉄則です。

【デューデリジェンスについて詳しく知りたい方はこちら】

【解説コラム】財務デューデリジェンス

【解説コラム】法務デューデリジェンス

【解説コラム】人事デューデリジェンス

協力会社や一人親方との信頼関係を維持し、統合プロセスを円滑に進める

譲渡後に「経営者が交代するなら退職する」と協力会社が離散しては、事業の継続は不可能です。

関係各所への説明時期は、意向表明書を受領し、相手企業の素性が明確になってからが鉄則といえます。

「運営体制は維持され、むしろ経営基盤は強化される」事実を具体的に提示する準備が必要です。

EBITDAやPERを用いた企業価値算定と個人保証解除の実務ステップ

建設会社の価値は、営業利益に役員報酬と減価償却費を加算した数値(EBITDA)の数倍を基準に算出されます。

これに純資産を加えた金額が、概算の譲渡価格です。

この対価から採用コスト等を差し引いても、経営者保証が解除され、手元に潤沢な資金を確保する道筋は十分に描けます。

【まとめ】建設業の事業承継におけるパートナー選びの重要性

建設業の事業承継は、単なる事務手続きに留まりません。

現場の技術を尊重し、職人の誇りを深く理解するパートナーを選定することが、最終的な満足度を左右します。

廃業を選択する前に、まずは専門家による企業診断を実施してください。

法的な承継手続きや、工事に付随する権利義務の整理については、建設業法に精通した【行政書士】へ相談することが、次にとるべき具体的なアクションへの最短距離です。

知識を得るだけでは、未来は変わりません。 激変する環境下で、貴社の選択肢が狭まってしまう前に『攻めの出口戦略』を。

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経営者としての集大成を、最も価値ある形で次へ繋ぐ準備は、今、ここから始まります。

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建設業における事業承継でよくあるご質問

Q: 建設業許可は、個人事業主から法人化しても本当に番号を引き継げますか?

A: はい、令和2年の法改正により、事前の認可を受けることで個人事業主の許可番号を法人がそのまま承継可能です。これにより「許可の空白期間」がなくなり、番号も変わらないため、既存の取引先との契約をスムーズに継続できます。

Q: 後継者がいないのですが、赤字(債務超過)でも会社を譲渡できますか?

A: 可能です。たとえ債務超過であっても、1級施工管理技士などの「有資格者」や、特定の「元請けルート」があれば、買い手にとっての資産価値が認められ、負債を含めて譲受されるケースは多くあります。まずは財務整理を行い、強みを可視化することが重要です。

Q: 建設業M&Aで、社長の「個人保証」は必ず外せますか?

A: 原則として、M&Aによる株式譲渡が成立すれば、買い手企業が金融機関との保証契約を引き継ぐ、あるいは一括返済を行うことで、売り手オーナーの個人保証は解除されます。契約条件に明記することが重要です。

Q: 事業承継の準備には、最低でもどのくらいの期間が必要ですか?

A: 手続き自体は半年程度で完了しますが、企業価値を高めて有利な条件で譲渡するためには、2年前からの財務改善や有資格者の育成が必要です。早めの着手が、最終的な譲渡価格に数千万円の差を生みます。

Q: M&Aを検討していることを、いつ従業員や取引先に伝えるべきですか?

A: 伝えるタイミングは「基本合意」の後、または「最終契約」の直前が一般的です。早い段階で噂が広まると、従業員の不安や協力会社の離脱を招き、破談のリスクが高まるため、情報の秘匿は徹底してください。

足立裕哉

株式会社船井総研あがたFAS コンサルタント

2023年、船井総研に中途入社。設備工事業に特化したM&A及び事業承継のご支援を担当。建設業・建築工事業を中心に事業承継問題や成長実行支援を行う。エリアは一都三県を中心としているが、九州や中国地方も併せて担当している。

足立裕哉

株式会社船井総研あがたFAS コンサルタント

2023年、船井総研に中途入社。設備工事業に特化したM&A及び事業承継のご支援を担当。建設業・建築工事業を中心に事業承継問題や成長実行支援を行う。エリアは一都三県を中心としているが、九州や中国地方も併せて担当している。