会計事務所のM&A相場|年間売上の1倍が基準?評価を分ける「単価50万」と「採用コスト」の正体

会計事務所の事業承継において、自身の事務所が「いくらで評価されるのか」は最も切実な問題です。

一般的には「年間売上の1倍」や「8掛け」といった表現が使われますが、実務の現場では、同じ売上でも評価額に数千万円の差が生じることは珍しくありません。

この記事では、100件以上の相談実績を持つ専門家の視点から、会計事務所のM&A相場の真実と、評価を高めるための具体的な指標を解説します。

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1.会計事務所のM&A相場はいくら?|年間安定報酬の「0.8〜1.2倍」が適正目安

会計事務所の譲渡対価を算定する際、最も多用される基準は「安定報酬(顧問料・決算料)の1年分」です。

これは、会計事務所の収益が極めて継続性に優れていることに由来します。

会計事務所のM&A動向についてはこちらのコラムをご覧ください。
会計事務所M&Aの成功の鉄則|職員の離職を防ぎ「価値」を最大化する

売上2億円で譲渡対価1.6億円。実際の成約事例から見る評価の分岐点

過去の成約事例を紐解くと、売上2億円の事務所が1.65億円で譲渡されたケースがあります。

これは売上に対する倍率で約0.8倍強ですが、注目すべきは営業利益率です。

役員報酬支払い前の営業利益で4,500万〜5,000万円を確保していたことが、高評価の決定打となりました。

譲受側は「譲受後の投資回収が何年で完了するか」を冷徹に計算します。

営業利益がしっかり出ている事務所は、相場の最大値に近い評価を得ることが可能です。

相続などのスポット報酬は評価対象外。M&A手数料相場に影響する「収益の質」

会計事務所のM&A手数料相場を考える上で、売上の内訳を精査することは不可欠です。

相続税申告などのスポット報酬は、その年度限りの収益とみなされ、譲渡価格の算定ベース(のれん代)からは除外されるのが通例です。

評価対象となるのは、あくまで「翌年以降も確実に発生する顧問報酬」です。

売上の総額だけでなく、収益の質を整理しておくことが、適正な価格交渉の第一歩といえます。

2. 事務所価値を最大化する3つの指標|顧問単価と従業員属性が「のれん」を決める

表面上の数字以上に評価を左右するのが、事務所内部の「質」です。譲受側がシビアに見るポイントは3つあります。

年間単価50万円以下の顧客は評価が下がる。生産性と利益率のシビアな関係

顧問先1件あたりの平均年間単価は、事務所の生産性を映し出す鏡です。

目安となるのは年間単価「50万円〜70万円」のラインです。

年間単価が50万円を切る小規模な顧問先ばかりの事務所は、管理コストが利益を圧迫していると判断され、評価が下がる傾向にあります。

逆に、100万円を超えるまとまった売上の顧問先が多い事務所は、効率的に利益を出せると評価され、譲渡価格が跳ね上がります。

従業員1人につき採用コスト200万円。有資格者とベテラン職員が持つ「人材価値」

現在の会計業界は、歴史的な人材不足に直面しています。

有能な職員を1人採用するためのコストは、紹介手数料を含めると約200万円に達することも珍しくありません。

例えば、ベテラン職員が5名在籍し、譲渡後も継続勤務してくれるのであれば、譲受側にとっては「1,000万円の採用コストが浮く」のと同義です。

職員の年齢構成や資格の有無、業界経験数は、財務諸表には表れない「見えない価値」として、価格交渉の強力なカードになります。

M&Aにおけるのれん評価(減損)について詳しく知りたい方はこちらのコラムもおすすめです。
【M&Aの減損とは?】のれん減損の要因や事例、回避策を解説

3. 会計事務所のM&A手数料と仲介手数料の仕組み|譲渡後に後悔しないためのコスト設計

会計事務所のM&A仲介手数料の体系を把握しておくことは、手残り資金を最大化するために重要です。

着手金・月額報酬・成功報酬。手数料体系の透明性が成功を左右する

M&A仲介会社に支払う手数料には、着手金、月額報酬(リテイナーフィー)、そして成約時に支払う成功報酬があります。

特に会計事務所の案件は「人」が商品であるため、破談のリスクも伴います。

初期費用を抑えた完全成功報酬制の会社を選ぶのか、手厚いアドバイザリーを求めて固定費を払うのか、自身の状況に合わせた選択が必要です。

4. 実務家が警鐘を鳴らす「持分譲渡」の罠|合名会社スキームでよくある破談の原因

会計事務所のM&A手数料や相場以上に、交渉の最終段階で致命的な問題となるのが、法人形態に起因するスキームの不一致です。

仲介会社も知らない?「法人による持分譲受け」が不可能なケースと解決策

税理士法人は、会社法上の「合名会社」に準ずる組織形態です。

そのため、法人の持ち分を譲渡する場合、買主は個人の税理士である必要があります。

大手の税理士法人が「法人として」引き継ぎに来る場合、単純な株式譲渡のようなノリで「持分譲渡」を進めようとすると、法的な壁に突き当たります。

このスキームを理解していない仲介会社が無理な提案をし、最終局面で破談になるケースが後を絶ちません。

正しい承継ルートを提示できる専門家をパートナーに選ぶことが、リスク回避の要諦です。

5. 離職を防ぐ「3年ソフトランディング」|引き継ぎ期間のストレス管理が肝

譲渡後の最大のリスクは、職員の離職と顧問先の離脱です。

これを防ぐには「2〜3年」の緩やかな承継期間(ソフトランディング)が鉄則といえます。

  • 職員への配慮:譲渡直後にシステム(会計ソフト)やオフィス、就業規則を無理に変えない。
  • 顧問先への配慮:担当者を変更せず、前代表が数年間は顧問として顔を出し続ける。

職員や顧問先にとって、代表が変わることは大きなストレスです。

まずは現状維持から入り、半年から1年かけて徐々に新しい体制へ移行することが、事務所価値を守る唯一の方法といえます。

【まとめ】会計事務所のM&A相場を知り、最良のバトンタッチを実現するために

会計事務所のM&A相場は「安定報酬の1年分」を軸に、営業利益率、顧問単価、そして職員の質によって上下します。

特に「顧問単価50万円の壁」や「採用コスト換算の視点」は、自身の事務所を正当に評価してもらうための強力な武器になります。

また、合名会社特有の持分譲渡スキームなど、専門的な壁を乗り越えるには、業界特有の商流を熟知したアドバイザーの存在が不可欠です。

事業承継を検討される際は、税務の専門家であるからこそ、M&Aの実務においても信頼できるプロフェッショナルへ相談することをお勧めします。

会計事務所・税理士法人の事業承継については、税理士、公認会計士のいずれの立場であっても、まずは業界の知見が豊富な船井総研あがたFASへ一度ご相談ください。

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会計事務所のM&A相場についてよくあるご質問

Q: 会計事務所の譲渡対価に税金はかかりますか?

A: 事業譲渡の場合は売却益に対して法人税(個人なら所得税)が課され、持分譲渡の場合は譲渡所得に対して約20%の分離課税が適用されます。 

Q: 顧問先が何件離脱したら価格は下がりますか?

A: 一般的な最終契約書には「表明保証条項」があり、成約から一定期間内(通常1年以内)に一定割合(例:10%以上)の離脱があった場合、対価の払い戻しや調整が行われるのが通例です。 

山中 章裕

(株)船井総研あがたFAS マネージングディレクター

大学卒業後、船井総合研究所に入社。税理士・会計事務所のコンサルティングに従事。 その後、HR部門にて住宅、不動産、建設、リフォーム、IT、製造、運送、給食、保育園など多くの業種の人材開発を支援。現在は、成長支援型のM&Aコンサルティングに従事。

山中 章裕

(株)船井総研あがたFAS マネージングディレクター

大学卒業後、船井総合研究所に入社。税理士・会計事務所のコンサルティングに従事。 その後、HR部門にて住宅、不動産、建設、リフォーム、IT、製造、運送、給食、保育園など多くの業種の人材開発を支援。現在は、成長支援型のM&Aコンサルティングに従事。