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電気工事業界のM&A事情について

  • 建設業 M&Aレポート

電気工事業を運営されている会社様へ、M&Aの業界動向についてお伝え致します。

電気工事業界の経営者平均年齢は、60才を超え(日本電設工業協会:電気工事業の現状と課題)高い水準にあります。経営者様の中には“知り合いの経営者が事業を売却した”、“事業の買収を打診された”などM&Aに関して何かと耳にすることがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。着々と身近になりつつあるM&Aについて少しでもご理解深めていただければ幸いです。

①電気工事業の動向について

電気工事業の完成工事高(下請を含む)は長期的な減少トレンドにありましたが、2012年の東日本大震災の復興需要や2016年の電力小売全面自由化に伴う外線・内線工事需要、2020年の東京オリンピックの建設需要などを背景に、2021年度では8~9兆円規模と堅調に推移しています(国土交通省:建設工事施工統計調査)。
一方で、従業員の高齢化、採用難、下請構造による低収益体質など、経営課題には根深いものがあります。なかでも、従業員の高齢化・採用難は顕著で、広く建設業で見ると10年前と比べて就業者数が約34万人の減少となっています(総務省:労働力調査)。長時間労働や休日稼働、職務の危険性といったイメージが嫌気され、若い従業員の採用が特に困難で世代交代が進みにくい現状があります。
従業員数10名以下の事業所が8割を占める(総務省統計局:経済センサス)電気工事業界においては、人材不足が法人の存続に直に影響し、結果としてM&Aが盛んに行われる状況となっています。

②電気工事業M&Aの特徴

 電気工事業と一口に言っても細かくは内線工事、外線工事、鉄道関連電気工事など細分化することができ、M&Aにおいてもそれぞれに再編・統合の進捗具合は異なります。発電関連の外線工事を担う企業は電力会社と、鉄道関連の電気工事を担う企業は鉄道会社と、既に資本関係にあるケースが散見され、実際に譲渡のご相談をいただくのは内線工事業の企業様が多い印象です。
 譲受企業としては、かつては同業によるエリア拡大・人員増強を目的とした買収が主でしたが、近年は設備工事・保守をワンストップで対応できる体制の構築を目指す非電気工事業や施工能力の獲得を狙う卸売業なども参入が相次いでいます。

③電気工事業におけるM&Aのメリット・デメリット

前述の通り、盛んに行われるようになった電気工事業のM&Aですがメリット・デメリットを整理してみると次のようになります。

【メリット】

  1. 後継者問題の解消
    1. 中小企業は後継者問題が深刻と言われますが、M&Aによって次のオーナーに事業を託すことによって事業を存続させることができます。幹部社員への承継という選択肢もありますが、個人保証の引継ぎや株式買い取り資金の借り入れなど一定のハードルの高さがあります。
  2. 従業員の雇用維持
    1. 廃業すれば解雇となる従業員もM&Aによって継続雇用が可能になります。労働集約型で電気工事士や施工管理技士などの有資格者が不可欠な電気工事業では譲渡後でも従業員が重宝される場合が多いでしょう。譲り受ける側からしても最大の経営課題の一つである人材不足の有効な対策となります。
  3. 取引先の継承
    1. 長年の信頼関係の中で培ってきた取引先関係も、法人格を存続させる株式譲渡であれば譲渡後でも継続取引が可能であることが多いです。譲渡する側からしても安心ですし、譲り受ける側からしてもグループでの取引先増加となるためメリットになります。
  4. 譲渡対価の受領
    1. 親族内後継者への承継であれば譲渡対価は発生せず、逆に贈与税・相続税の課税対象となりますが、第三者への譲渡であればその対価の受領が可能です。
  5. 新たなノウハウ・技術の獲得
    1. 親会社となる譲受企業との協業によって、新たなノウハウや技術を相互に吸収しあい、更なる成長を目指せます。

【デメリット・留意事項】

  1. 譲渡条件の不一致
    1. 高く売りたい譲渡側と安く買いたい譲受側とで、条件面の折り合いがつかないことが往々にしてあります。電気工事業においては、一人親方から始まった企業で営業を代表者に依存したままであるような場合に、代表者の引退と同時に売り上げの目途が立たなくなると判断され、厳しい条件提示を受けることがあります。譲渡を検討する際には、代表者が引退した後も自走できる組織体制を予め確立しておくことが望ましいでしょう。
  2. 自分の会社でなくなる喪失感
    1. それまで自分の会社として、オーナーシップをもって運営してきたところ、他の企業傘下となり子会社化することで喪失感を覚える方も少なくないようです。譲渡後も会社に残る場合であってもいわゆる“サラリーマン社長”となりそれまでとは違う立ち位置になります。
  3. 企業文化の不一致
    1. 企業文化については事前の調査・ヒアリングにも限りがあり、すり合わせしきれないまま譲渡が成立することがあります。後に運携・統合を進める際、譲渡企業と譲受企業の企業文化が違うために戸惑いが生じ、退職者が出てしまうこともあります。

④電気工事業におけるM&Aのまとめ

以上のように電気工事業のM&Aが身近になってきているため、皆様も納得感の多い部分もあったのではないでしょうか?
M&Aはメリットも多くありますが、当然、デメリットもあります。
船井総研ではM&Aを通して企業が成長していけるようサポートするため、建設工事業専門の経営コンサルタントとM&A専門コンサルタントがタッグを組んでM&Aのサポートさせていただきます。
譲渡をご検討の方も、譲り受けをご検討の方もお気軽にお問い合わせください。

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