2018年 弊社M&A取引事例の振り返り
- M&Aの時流
2018年も残すところ1ヶ月となりました。
年間28,000件の廃業に対して3,000件のM&A成立から計算すると、年間2万5千の廃業が続いている現状が今後も少子高齢化で加速する恐れもあり、政府主導で事業承継への後押しを進めているところとなります。
会社法上、債務超過では廃業できない事からすれば、2万5千の廃業の中には、事業継続は可能だが後継者不在で廃業せざるを得ない事業主様が多数含まれている事が推測されます。
今後の事業承継の選択肢としてM&Aが増える事、更には、M&Aによる事業拡大が経営戦略の一手法となる事に期待したいと思います。
さて、2018年に弊社がアドバイザー(代理)及び仲介として関与させて頂いた9件のM&A取引事例(仲介は1としてカウント。進行案件含む)を振り返ると、うち2件は買手として投資会社が登場します。
M&Aにおける一般の事業会社と投資会社との違いとは、どの様なところなのでしょうか?
投資会社は機関や個人から資金調達し、預かった資金を元手に、株式、不動産、債券などに投資し運用します。第一種や第二種の金融取引免許を持ち金融商品取引法(金商法)の規制を受けます。
また、資産流動化法(流動化法)に基づき、SPC(特定目的会社)やTMK(特定目的会社)などの法人を、投資対象や資産に応じて設立します。
1つ目の特徴として、金商法や流動化法などの法規制を受けている点が挙げられます。
もちろん一般の事業会社でも様々な法規制を受けていますが、有価証券報告書提出など投資会社に課される法規制は上場企業並みといったところです。
2つ目の特徴として、財務や法務の専門家を抱えながら、事業投資ではマネジメントの知見も備えているのが一般的である点が挙げられます。但し、ユニークなのは、事業運営は投資先を尊重しある程度任せようというスタンスです。「餅屋は餅屋」ではないですが、運営はプロの会社に任せ、資金繰りや管理部門の効率化、新規チャネルの開発は投資会社が請け負うといった役割が明確に分けられている点が特徴的と言えます。
3つ目の特徴として、企業価値向上を目的としたセットアッパー的役割である点です。先に触れたとおり、投資会社は投資家より資金調達するのが多いのですが、いずれは償還期を迎えるので投資した会社様の出口を模索する必要があります。
出口として上場(IPO)やバイアウト(M&A)が挙げられますが、MBO(経営陣買収)として独立する事も十分あり得ます。
但し、企業価値が向上しないと、これらの可能性はいずれも低くなるため、買収前の精査(DD)は詳細なものとなります。
一般の事業会社とも異なる投資会社への売却、いかがでしたか?投資会社と一緒に運営共同体で同じ船に乗り企業価値を高める取り組みは、誤解されやすいファンドや投資会社へのイメージを一新させるものとなります。新たな事業パートナーとして注目されるのも興味深いところとなります。
船井総研入社後は専門サービス業の経営コンサルティング部門の統括責任者として多数のM&Aを経験。現在は、M&A部門の統括責任者をつとめる。買って終わり、売って終わりではなく、M&A後の企業成長を実現するマッチングに定評がある。過去経営支援を行ってきた企業は200を超える。
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